いづれの御時にか、 女御、更衣あまた さぶらひたまひけるなかに、 いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて 時めきたまふありけり。 はじめより我はと 思ひ上がりたまへる御方がた、 めざましきものにおとしめ嫉みたまふ。 同じほど、それより下臈の更衣たちは、 ましてやすからず。朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、 恨みを負ふ積もり にやありけむ、いと 篤しくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、 いよいよあかずあはれなるものに思ほして、人の そしりをも え憚らせたまはず、世のためしにも なりぬべき御もてなしなり。
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